登入「あとで、そちらの部屋へ行く」
部屋の前に着くと、セオドアがローティシアの表情を探るように見つめてそう告げた。
胸の内を読まれたようで、思わず息を呑む。
「はい、承知しました」
膝を折って一礼し、自室へ戻る。扉を閉じると、思わずその場にへたり込みたくなったが、メイアがそばにいるのでそうもいかない。用意された夜着に袖を通し、ガウンを羽織ってソファに身を沈めた。
前回の記憶が蘇り、下腹が重く引き攣れる。
どうすれば、耐えられるのだろう。あんな激しい興奮に、声を出さずただじっとしているなんて……
そうだ、「祈りの書」を心の中で暗唱していれば、平静を保てるかもしれない。最近読んでいなかったが、今夜のために改めて目を通しておこう。
荷物の中から、教会でもらった古びた一冊を取り出す。
「奥さま、お茶をお持ちしました」
メイアが静かに声をかけ、ソファテーブルにカップを置く。
「ありがとうございます……」
また礼を言ってしまった。
「テオ様、あ、どうしてこんな、ん‥‥ぁ、体が変です」「テオ、だ。そう呼んで」「あぁ、はっ、そんな、テオ様、そんなこと‥‥あぁ!」隘路を指で可愛がりながら、その先の花芯を親指で軽く擦り上げる。その強い刺激にローティシアが悲鳴を上げた。中が締まり指が締め付けられる。「テオ‥‥と呼んで」「あぁ、テオ‥‥テオ‥‥」体を反らしてしがみつきながら、観念して縋るように名前を呼び続ける。その度にセオドアの指は締め付けられる。熱に浮かされたように自分の名前を呼び続けるその姿に、理性がはちきれそうだった。指を抜き蜜をたたえたそこに自分の雄心を押し当て、中へと進み始める。「あっ、ん、テオ‥‥」慣れない体はまだ狭くてきつい。少し進むたびに締め付けて苦しい。今すぐにでも暴発しそうなそれを必死で食い止めてゆっくりと入りこんでいく。粗い息を宥めるようにローティシアの腰を撫でさする。「‥‥痛くないか?」粗い息を吐き、眉間に皺を寄せているローティシアを気遣う。「おかしいの‥‥体が、あぁ、ん、どうかしてしまいそう」震える声で唇を震わせて、そう言いながら自分に縋るその姿に理性が脆くも崩れる。ゆっくりと進んでいた雄心を最奥へと一気に突き入れた。まるでもう逃がさないというように彼女の中が雄心を絞り上げる。「いや、あぁっ‥‥」「ぐ‥‥うぅっ」ローティシアが、快感に身を震わせる。セオドアもその瞬間に強い吐精感に襲われ、耐えきれず呻きながら彼女の奥に精を撒いた。自分で自分に驚く。こんなことは人生初めての時にも無かった。粗い息を吐いて甘い香りのする白い首筋に顔を埋める。本当に、どうかしている。しばらく彼女の中の秘めやかな蠢きに身をゆだねていると、その心地よさに下腹が再び熱くなってくる。自分の蒔いたものと彼女の蜜ですっかり滑りのよくなったそこは、もう何の抵抗もなかった。ゆっくりと抽送を始めると、力の抜けていたローティシアの腕が再び縋り付くように背中を掴む。粗
セオドアは、彼女の眦からこぼれる雫に胸がつまり、思わずそれを指でそっとぬぐった。しかし‥‥上手くやれない、とは?彼女は、行為を嫌々ながら我慢するのだと思っていたが、何やら話が噛み合っていない。「ロッティ、あなたは、男性とこういう行為をすることに嫌悪感抱いてしまっているのだろう?だから、我慢して受け入れると」目の端に涙を溜めて、目を丸くして顔を赤くする。「あ、え、っと、その、いえ、あの‥‥声が‥‥どうしても声が出てしまって。じっと黙っていることが我慢できないのです」全身を真っ赤に染めて、再びうつむく。赤く火照った首筋が心を揺さぶり、思わず唇を落としそうになる。しかし、声を我慢……?「なぜ、声を出すことを我慢したいのだ?」ローティシアは、どうしてそのようなことを聞かれたのだろうか、と言うように顔を上げて自分を見つめた。「貴族の行いのマナーでは、声は出さないもの、と習いましたので……」習った‥‥「すまないが、他にどのようなことを習ったのか教えてもらえるだろうか」見開いた眼をさらに大きくして、薄く唇を開き驚いた顔をした。こうしたことを話すこと自体が恥ずかしくてたまらないのだろう、話し始めるまでにかなりの時間をかけ、身体中を真っ赤にして辿々しく言葉を絞り出した。なんなんだろうか、このひどく‥‥可愛らしい生き物は。話す内容を聞きながら、意図的に歪んだ情報を刷り込んだクロードの夫人に怒りを覚える。それと同時に、どのように行為をすると習ったかを口にする、その恥ずかしげな様子にどうしようもなく興奮している自分がいた。「ロッティ、あなたの教えてもらった事には、随分と偏った内容が含まれているようだ」そう言いながら、堪らず体を引き寄せて、膝の上に横向きに座るように乗せる。羽織ったガウンの裾がはだけて白く細い膝と太ももが見えた。驚いてローティシアが息を呑む。「今から私がその誤りを一つずつ正していくから」ガウン越しに胸
「あとで、そちらの部屋へ行く」部屋の前に着くと、セオドアがローティシアの表情を探るように見つめてそう告げた。胸の内を読まれたようで、思わず息を呑む。「はい、承知しました」膝を折って一礼し、自室へ戻る。扉を閉じると、思わずその場にへたり込みたくなったが、メイアがそばにいるのでそうもいかない。用意された夜着に袖を通し、ガウンを羽織ってソファに身を沈めた。前回の記憶が蘇り、下腹が重く引き攣れる。どうすれば、耐えられるのだろう。あんな激しい興奮に、声を出さずただじっとしているなんて……そうだ、「祈りの書」を心の中で暗唱していれば、平静を保てるかもしれない。最近読んでいなかったが、今夜のために改めて目を通しておこう。荷物の中から、教会でもらった古びた一冊を取り出す。「奥さま、お茶をお持ちしました」メイアが静かに声をかけ、ソファテーブルにカップを置く。「ありがとうございます……」また礼を言ってしまった。けれど、メイアは何も言わず、穏やかに微笑んで膝を折る。その姿に、自分はやはり淑女向きではないのだと、ひしひしと感じる。祈りの書を開き、「救いの女神”アエラ”への祈り」の章に目を落とす。---慈しみ深き女神よ すべての命に光を与える御方よ あなたの御心は大地に満ち 風に、木々に、水の流れに宿るあなたに選ばれし使徒たちは―――---この祈りを心の中で唱えていれば、きっと落ち着いて臨めるはず。淑女らしく振る舞うことができないのなら、せめて求められている務めくらいは、まともに果たさなければ。◇◇◇セオドアは夜着に着替えた後、しばらく隣室の扉の前で逡巡していた。「行く」とは言ったものの、彼女は怖がっているのではないか——だが、このまま何もなかったことにはできない。それに……正直なところ、旅の間、初夜の記憶が頭から離れた日はなかった。泣かせてしまった彼女の表情、それでもシーツに広がっていた銀の髪、触
「ドーバンさん、よろしくお願いします。ローティシアです」「奥さま、私はただの使用人です。どうぞ『ドーバン』とだけお呼びください」「はい……」「まずはお疲れでしょうから、お部屋へご案内いたします」ドーバンの後を追って、ローティシアは石造りの城の中へと足を踏み入れた。広々としたエントランスには、高い天井と色鮮やかなステンドグラス。そこから差し込む光が、床に幻想的な模様を描いている。歴代当主の肖像画が並ぶ回廊を抜けると、空気の質が変わったように感じられた。「こちらが居住区域です。あちら奥には使用人の部屋があり、私は反対側の回廊の先におります」さらに進むと、深紅と紫が混ざった重厚な絨毯がまっすぐに延びていた。「こちらが奥さまの居室です」女神像と神木が彫り込まれた重厚な扉が開かれる。部屋の中には白く柔らかな絨毯、寝椅子にソファ、作業机とティーテーブル。奥には天蓋付きの大きなベッド。クマの毛皮がそこに広がっていた。「左手の扉が書斎、向こうの扉は旦那さまの居室とつながっております」ドーバンが指差した先に目を向けると、思わず頬が熱くなる。「奥さまのお世話をいたします侍女のメイアです。こちらで長年仕えております」先ほどから控えていた女性が丁寧に頭を下げた。「メイアにお茶を用意させますので、どうぞご休憩を。半時ほどで再び参ります」ドーバンが退出すると、メイアが静かにお茶の支度を始めた。アビゲイルの言葉が、ふと脳裏をよぎる。『――せいぜい使用人に馬鹿にされて』侍女の所作の美しさに、思わず気後れする。ティーカップを手にしたら、震えてこぼしてしまいそうだった。「ありがとうございます」小さく息を吐いて、ローティシアは微笑みながら礼を言った。メイアは驚いたように目を見開いたが、すぐに柔らかな笑みで応え、膝を折って頭を下げた。香り高いお茶は、不思議と心をほぐしてくれた。◇◇◇その後、ドーバンに城内の主要な部屋の案内を受けた。図書室、資料庫、応接室、食堂、晩餐室——ついて回るだけで膝が笑ってしまうほどの広さだった。「差し当たり、お過ごしになる場所はこのあたりでしょう。明日以降、他の場所もご案内いたします」居室に戻ると、湯桶が運ばれてきた。メイアが静かに勧める。「奥さま、晩餐の前にお湯に浸かってお身体をお休めください」ゆっくりと湯に身を沈める
セオドアが馬に水を飲ませて戻ってくると、ローティシアが去年雇ったばかりの若い侍従と楽しそうに話をしていた。その様子を見て、なぜだか不快感がわく。自分と2人の夕食の席も、宿で隣に座って食事を取っている時も、ほとんど会話は無い。笑顔は作っているが、自分に対してはいつも緊張が感じられる。大人しくて、内気で、男性慣れしていないからだろう、と思っていたが、こうやって楽し気に会話をすることもできるのではないか。なぜ自分にはこうした姿を見せないのか。そう思ったらなぜかイライラとした気分になって、いつものように穏やかに接するのが難しくなった。そして、こんな風に自分の感情がコントロールできていないことに気づくと、父を思い出してますます気分が悪くなった。◇◇◇旅も一週間を過ぎるころには、馬車の窓から吹き込む風が、ぐっと冷たさを増していた。帝都を出た日は秋の気配を感じる程度で、ショールすら必要なかったのに。ここまで来ると、外に出るにはマントを羽織らなければ首元が冷えて仕方がない。「明日の昼過ぎには城に着く予定だ。このまま進むと、日が暮れる頃に森に差しかかる。今日は少し早いが、この村で一泊しよう」旅程が順調だと聞いたのは昨日のことだった。無駄な休憩を取らせてしまわぬよう、ローティシアはできるだけ静かに馬車の隅に座っていた。それが少しでも成果として表れたのかと思うと、胸をなでおろしたくなる。普段は、夕刻も深まってから宿に入るため、周囲をゆっくり見る余裕もなかった。けれど今日はまだ陽が高い。ローティシアは馬車を降り、肩にマントをかけながら、辺りを見渡した。小さな街道沿いに建つ中継のための村。今日泊まる宿のほかに、こぢんまりとした宿がもう二軒。食堂の看板を掲げた建物と鍛冶屋、道の向こうに数軒の民家がぽつぽつと並んでいる。帝都とは異なり、どの建物にも立派なレンガ造りの煙突がある。同じ国の中でも、地域によって暮らしの形はこんなにも違うのかと、しみじみ思う。南方の帝都では、冬でも雪がほとんど降らない。ましてや、かつて暮らしていた教会の辺りでは、建物の壁もここほど重厚ではなかっ
翌朝、ローティシアが目覚めると、すでに閣下は寝台にいなかった。使用人が小さな桶にお湯を持って来てくれたので、顔を洗い着替える。朝食を持ってきましょうか?と聞かれたので、閣下はどうされたのかと聞くと、とうに朝食を取って出発の準備をしていると言う。あまりお腹は減っていなかったが、食べずに出発して途中で倒れでもしたら迷惑をかけるだろうと思い、ブリオッシュとコーヒーだけをもらった。食べ終わって、昨夜出した小物を鞄に片付けていると、閣下が部屋にやってきた。「もう起きたのか。もう少しゆっくり寝ていても大丈夫だったのに。その‥‥体は辛くないだろうか」優しいその一言に、昨夜の出来事を思い出してしまい、顔が火照った。「だ、大丈夫です。辛くはございません。閣下がご出発の準備をされていると伺いましたので、私も、と」早口で答えて火照った顔を隠すようにうつむくと、近寄ってきて様子を確認するように顔を覗き込まれた。これもノブレス・オブリージュなのだろうか。なんて素敵な黒い瞳‥‥うっとりとしてしまう。「テオだ。そう呼んでくれる約束だったのではないか?」「テ、テオ様‥‥もうご出発されますか?」「そうだな、あなたが準備できたら出発をしようか。北へ向かうほど日暮れが早くなるから」◇◇◇快適な馬車の中でゆったりと窓の外を眺める。帝都に来る前に身を寄せていた教会は、州の南側にあった。北に向かってこんなに遠くに来るのは初めてで、連なる山脈や奥深い森、その間にある湖などすべてが新鮮だった。馬車は、ゆっくりと休めるように片側の座席が寝椅子のようにしつらえられていて、ふかふかとしたクッションと毛布があり、足を伸ばして寝ることができた。出発した日は、さすがに前夜のこともあり、直後からひどい眠気に襲われ、ずっと横になっていた。閣下‥‥セオドアは、馬車に並走するように馬を走らせ、時折、窓越しに問題が無いか声をかけてくれる。本当になんと優しい人なのだろうか。途中の宿では、同行する皆と一緒に食堂で食事を